異種溶媒間の液絡には、溶媒が互いに自由に混じり合う場合から殆んど混じり合わない場合まである。互いに自由に混じり合う溶媒間の液間電位差は、非水溶媒系における電気分析化学の理論および測定法上の基本的な問題点として重要であり、また互いに混じり合わない溶媒間の液間電位差は近年盛んになってきた油水界面電気化学分析法の基礎として重視されている。本研究は、この二つの液間電位差の発生機構の関係を解明し、部分的に混じり合う溶媒間も含めて、異種溶媒間の液間電位差を統一的に理解できるようにすることが目的である。 本年度は次の研究を行った。1)異種溶媒間の液間電位差を構成する三成分のうち、液絡の両側でのイオンの溶媒和エネルギーの差によって生じる成分について詳細に検討した。まず、電解質の変化によって起きるこの成分の値の変化が起電力測定法によって実測可能であることを証明した。次に、各種の溶媒間の液絡について、この成分の変化量を実測した。次に、各種の溶媒間の液絡について、この成分の変化量を実測し、簡単な理論式を用いて求めた計算値を比較した。すべての溶媒の組合せの液絡について、実測値と計算値との間によい直線関係が得られた。とくに互いに混じり合わない水/ニトロベンゼン間の液絡では、実測値と理論値はよく一致した。しかし、部分的あるいは自由に混じり合う溶媒間の液絡については、実測値の変化は理論から予測される値の約1/2であった。この理由について考察するとともに、直線関係を用いて本成分を見積る方法を提案した。2)各種の液絡における液間電位差の三成分の値を本研究および従来の研究で提案した方法により見積り、それらを合計して全液間電位差の値を求めた。これらの値は旧来から行われて来た間接法による見積り値と比較的よく一致し、本研究による見積り法が妥当であることを示すことができた。この三成分の見積り法は、実際測定に使用するセルの液絡部分を設計する場合に有用である。
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