1.化学センサーの地震化学観測への応用。半導体H_2センサーを用いることによって、地下水ガスのH_2濃度変化をとらえ、ガスクロマトグラフによる定期観測結果とあわせ、地震活動と地下水ガス組成変動さらに地下水湧出量変化などとの対応関係を把握する矯めに、幾つかの室内実験、野外観測を実施した。H_2センサーの較正装置を製作し、感度の較正法と他の還元性ガス、特にCH_4の感応条件について検討した。H_2濃度とセンサー出力電圧の間には、logE=a+blogC(H_2)の直線関係が0.1〜100ppmの範囲にわたって成立することを確認した。さらにCH_4感応は少なくとも1500ppmまでは無視出来ることも判明した。センサーの酸素分配存在性、水中溶存H_2のinsita測定に関する問題については充分な検討が行えなかったので、今後の課題としたい。地下水ガスのH_2の地震に対応した変動という点では、ガスクロマトグラフによる観測から重要な知見が得られた。これは、観測井付近で発生したM=3〜4程度の小さな地震に対応して地下水に溶存するH_2の濃度が大きく変動するという事実である。この研究成果の内容は研究論文として公表を準備している。 2.地震化学観測のデータ処理法の改良。クロマトグラフ用データ処理装置を導入することによって、ガス分析データは従来の半分の所要時間で得られるようになった。また何年にも及ぶガス組成観測では、標準ガスの交換が不可欠となり、この際の新旧標準ガスの相互較正は正確に行わねばならない。この作業にもデータ処理装置は大いに活用しうることがわかった。PC用のデータファイルの作製も、82年からの遊離ガス観測データについては完了した。これらを検索処理し、図形出力させる為のプログラムも作製した。これにより作図作業の大巾な効率化が出来た。 3.研究発表。地球化学会と地震学会で4件の研究結果口頭発表をおこなうとともに、英文論文1編を米国地球物理連合誌から出版した。
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