1.有機スズ化合物による海洋汚染の指標生物としてスズキ(Sea bass)が広く使われていることから、スズキ可食部を生物標準試料の材料として用いた。本年度7月上旬に東京湾で捕獲されたスズキ(体長50〜60cm、体重1〜2kg)は氷冷されたまま到着したので、直ちに液体窒素で凍結して保存した。有機金属化合物に関する標準試料であるため、試料調整はできる限り低温で行い、保有条件に注意した。 スズキは解凍後、三枚におろして白身(50kg)のみを標準試料に使用した。魚肉白身を約2cm角に刻み、ホモゲナイザーで3分間粉砕してペースト化し、この操作をくり返した後、全量を一度に凍結乾燥して12kgの粉末を得た。ここで試料はやや固まりとなったので、適当量をアルミナボールミル中で約20分間撹拌して粉末化した後、全量をV型混合機中で約1時間混合して均質化した。 保存性を良くするために、スズキ粉末標準試料は脱酸素状態で低温保存することとした。均質化した試料は20gずつポリエチレン袋に入れ、脱酸素剤(エイジレス)と共に、ポリエチレンラミネート袋中に二重に脱気包装した。本標準試料は-20℃の冷凍室に保存されている。 2.有機スズ化合物の中で代表的なトリブチルスズ、トリフェニルスズについて、炎光光度検出-ガスクロマトグラフィー(FPD-GC)法による分析条件を検討した。本標準試料中の有機スズ化合物を塩酸・メタノール/酢酸エチル混合溶媒で抽出し、ヘキサン/酢酸エチルに転溶、濃縮した後、陰イオン及び陽イオン交換樹脂を通して前処理を行う。陽イオン交換樹脂に吸着した有機スズ化合物を塩酸酸性メタノールで溶出し、ヘキサン/シクロヘキサン転溶液、水素化してFPD-GCで定量した。スズキ粉末標準試料中のトリブチルスズ、トリフェニルスズについて、ECD-GO法と良く一致した分析結果を得た。
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