ウルシラッカーゼ、ウシセルロプラスミン、きゅうりアスコルビン酸(ビタミンC)酸化酵素のタイプICuをHgまたはAgに選択的に置換することに成功した。そして、主としてEPRスペクトルを用いて、タイプII、IIICuの配位グループが2〜3個のヒスチジンイミダゾール基であることを明らかにした。次いで、ラッカーゼのタイプII、タイプIIICuサイトをCo(II)に置換することに成功し、MCD(磁気円二色性)スペクトルから、タイプII、IICu結合部位の立体構造が大きく4面体的なひずみを伴っていることを明らかにした。また、タイプII、IIICuサイトは若干配位子場の強さが異なっていることがわかった。さらにこのCo(II)置換を通じて、マルチ銅酸化酵素のタイプIIICuサイトは軟体動物や節足動物のO_2運搬体であるヘモシアニンや微生物、カビなどに広く含まれるチロシナーゼの活性中心と極めて類似性の高いことが示された。以上のような金属置換の研究によってタイプIIサイトとタイプIIIサイトは空間的にも極めて近接しており、タイプIICuの存在がタイプIIICuの酸化状態や反応性などに強く影響し、コントロールする働きもあることが明らかとなった。これは最近いまさらのように主張される集積反応場において協同効果が極めて巧妙に現われる例であって、生体系が如何に上手にこのような協同効果を生みだしているかという手本になると考えられる。今後はさらに多様な金属ハイブリッド酵素が作られれば、反応メカニズムの解明につながることが期待される。また、アスコルビン酸酸化酵素の一次構造は別のグループによって読みとられたので、今後は大腸菌に発玖させる研究展開が期待される。
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