前年度までの研究によって次の事が明らかとなっている(1)高G6PD活性を示す三つの突然変異系統(キイロショウジョウバエ)のG6PD遺伝子座には、転写開始点直前と第一イントロン中に各々一つ宛の挿入配列が存在する。(2)これら二種の挿入配列の中G6PDの転写を促進させる効果をもつものは転写開始点直前に挿入したものである。(3)この挿入配列は二箇のKPと呼ばれる欠損型P因子とそれに挟まれて存在する609塩基対よりなる新型のP因子からなっているが、これらのうち転写促進作用を有するものは、間に挟まれたP因子である。(4)このP因子は完全型のP因子の206から2503番目までの塩基が欠失したもので、この欠失により切断点をまたぐ、26塩基よりなるパリンドロ-ム構造が出来る。 今年度明らかになったことは、多分このパリンドロ-ム構造を特異的に認識し、これに結合する蛋白が、野生型カントンS系統および高G6PD活性を示す突然変異系統の胚の核に存在すること、また、この核蛋白の結合を負に調節すると思われる因子が野生型系統Harwickに存在することである。目下、この核蛋白が確かに調節作用をもったものであるか否かをin vitroの転写系を用いて調査中である。また609塩基の欠損型P因子が他の構造遺伝子の転写速度を上昇させることが出来るのかも調べている。今迄に得られた結果をまとめて二篇の論文として公表した。
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