可動因子の挿入によって惹き起されたと思われる高G6PD活性を示す突然変異系統三つとそれらよりえられた復帰突然変異系統を用いて、可動因子による転写調節の作用機序について調査した。その結果次の事が判明した。(1)突然変異系統のG6PD遺伝子座には二種の挿入配列が存在する。(2)これら二種の中G6PDの転写促進作用をもつものは転写開始点直前に挿入しているものである。(3)その構造は二つのKPとそれに挟まれた一つまたは二つの609塩基対よりなる新型の欠損型P因子より成っているが、突然変異の原因は後者(コアP)である。(4)突然変異系統のmRNAの構造は野生型と同じである。(5)コアP中に一対のDNase高感受性領域が存在する。(6)コアPの挿入点と転写開始点の間には脊椎動物のハウスキ-ピング遺伝子に共通した配列と相同性の高い配列が存在する。(7)コアPには他のP因子にはみられない回文構造をとりうる26塩基よりなる配列が存在し、多分これを特異的に認識して結合する核蛋白が、野性型カントンS系統にも高G6PD突然変異系統にも存在する。従ってこの核蛋白が正常転写系の速度昂進に役立っているものと思われる。(8)この核蛋白とコアP因子の相互作用を抑制する働きをもつ因子が野性型系統Harwickに存在する。 以上のように本研究で目的とした可動因子による転写調節機構については概略が明らかとなった。今後は、コアPが他の遺伝子に対しても同様の作用を示すか、また、調節核蛋白の構造および正常転写因子との相互作用の実態を明らかにしたい。
|