河川はたえず河川水が流れ去っていく開放系である。その中で河床の石面に形成される付着層は1つの“棲み家"として微生物の生活場所になっている。河床の付着層は微生物の中で、数の上からも働きの上からも最も重要な仲間が細菌群集である。この細菌群集の種類構成を明らかにすることは、河川という環境を考えた場合、重要なテ-マとなる。細菌群集の構成の検討には、どうしても平板法を用いることになるが、平板の培養温度には共通の理解はない。そこで細菌フロラを決定する要困の1つに何度でコロニ-を形成させたかという事が重要になってくる。自然界の細菌には夛様な仲間がおり、それらが1つの培養温度で1度に観察されるわけではないので 、平板上の細菌フロラにこの点が大きくかかわってくる。本研究では、物質的な側面から細菌フロラを決定していると思われる付着層の藻類と細菌の関係を実験的に認めることは失敗に終ったが、細菌フロラを得る技術的側面の1つである培養温度については、5・20・30・37℃の4段階で培養を行い、一定の成果を得た。すなわち、細菌フロラの1断面であるコロニ-形成曲線を得ることによってそこに及ぼす環境要因との関連から、細菌群集の変動をとらえることができた。河川水を流れていく細菌群集の数や、コロニ-形成曲線の係数の変動には規則性はみられなかったが、付着層の細菌群集のコロニ-数は河川水中の有機物濃度に基づいて変動し、入やtrという係数の変動も河川環境との相関が認められた。これらの結果は上流域の流れに早いところの付着層で認められた要因とは異なり、河川の地域によって細菌群集の受ける影響は異なることが明らかとなった。細菌フロラを決定する要因も同様、地域によって異なることになる。
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