本研究は鳥類の渡りの生理と日照、温度等の関係について調べるのが目的である。 冬鳥で北海道まで渡るオオジュリンを用い、温度20℃、湿度50%で、日照時間を8Lから16Lまで延長した。それによって13L〜13.5Lあたりで渡りの衝動が起きた。この際予定では渡り行動の起きない時期(8L)、起きた直後(13.5L)最長時(16L)の3時点における甲状腺や生殖腺等の内分泌器官における生理状態の変化を調べる積りであったが、個体数が少なかったため、今回は8Lと16Lのみについて比較検討を行った。 具体的方法としては、マイクロスイッチ内蔵の竹かごに一羽づつ入れ、それら計8羽を今回購入した低温恒温機に入れ、8L時と16L時の鳥の体重、生殖腺、甲状腺、脂肪量等さらに血液プラズマ中におけるステロイドホルモンの量を調べ、比較検討を行った。 その結果、体重は長処理(16L)の鳥では増加したが、短日(8L)のものでは変化がなかった。生殖腺については精巣重量では16Lのものは8Lのものより100倍以上の増加がみられた。卵巣重量についても16Lの方がかなりの増加をみた。甲状腺では、重量の変化は8Lも16Lもあまり変化はなかったが、上皮組織の厚さなどによる活動量でしらべた結果においては、16Lの鳥の方が8Lのものよりかなり活発であった。血液のプラズマ中におけるステロイドホルモン量は処理後名古屋大学農学部の島田清司博士に依頼したが、測定結果は16Lの方が♂♀ともホルモン量が増加していた。 今回は、実験時期が遅れたこともあってか、渡りの衝動の程度がやや低かったり、飼育機の収容数の制限等によって充分な実験を行うことが出来なかった。これらの点について64年度に再実験を行いまとめていきたいと考えている。
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