本年度はウリミバエとカワトンボに重点をおいて研究を行った。 1.ウリミバエは10時間以上の長時間交尾を行う。その生物学的意義を明らかにするために、1匹のメスに2匹のオス(γ線照射による不妊オスと正常オス)を、人為的に交尾時間をコントロールして連続交尾させ、そのメスのうんだ卵のふ化率により精子優先度を推定した。その結果、交尾時間が相対的に長いほど精子優先度が高くなることがわかった。雄は長時間交尾によって、できるだけ多くの精子をメスに渡し、受精競争に有利になるとする「精子負荷仮説」を支持した。しかし、精子量の測定を行わないと決定的なことが言えず、今後の課題となった。 2.カワトンボではウリミバエと異なり、精子の除去が父性決定に重要な役割を果たすことがわかった。カワトンボは交尾の姿勢によって、交尾時間を2つのステージに分けることができる。第1のステージでライバルオスの精子除去、第2ステージで射精がおきる。交尾時間は個体変異が大きく、なわばりオスでは短く、非なわばりオスでは長い傾向があった。第1ステージで交尾を中断させ、メスの精子貯蔵器管内の精子量を測定した結果、長い交尾の時は精子除去率が高いことがわかった。 3.カワトンボのオスにγ線を照射し不妊化し、メスに正常なオスと不妊化したオスを交互に交尾させて採卵し、フ化率により精子優先度を測定した。その結果、交尾直後に産卵された卵の父性はすべて後で交尾したオスのものであることがわかった。ただし交尾後数日を経過すると父性が落ちることもわかった。これらの現象をカワトンボの配偶システムと関連づけて説明するために、数理的な研究が必要となった。これは次年度の課題に含る予定である。
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