愛媛県松山市にある石手川ダム潮の上流端で淡水赤潮を形成する渦鞭毛藻Ceratium hirundinellaの増殖条件を明らかにするために、本年度はマイクロコズムの設置頻度および設置場所を変えて現場の増殖要因を検討しようとした。しかし本年度は現場におけるC.hirundinellaの密度が極端に低く1984年来毎年夏季に見られた淡水赤潮は形成されなかった。この原因は今のところ不明である。よって、本年度の交付申請書に記した研究実施計画の内、C.hirundinellaの増殖要因に関する実験の成果は得られなかった。あらかじめこのような事態を考慮にいれて、本年度実施予定の実験項目に関連させ、プランクトンネットでC.hirundinellaの栄養細胞の出入りをなくした小型マイクロコズムをダム湖の各水深に設置し、シストの発芽要因の検討を並行して行った。更に、この実験に加えて、室内実験等も行った。その結果、以下に述べるいくつかの新しい知見が得られた。 1.水温が鉛直的に均一な20℃の時、シストの発芽率は水深が浅いほど高く、水深0.5mに於ける発芽率は約2%であった。また水深30m以深ではほとんど発芽しないことが解った。 2.照度とシストの発芽率との関係を室内培養によって調べた結果、発芽率は10000luxから30luxの間では約2%で、暗条件では約0.6%であった。この実験結果から、現場における暗条件の部位でシストがわずかに発芽することが考えられたが、実際には発芽がまったく確認できなかった。 3.水深に伴う発芽率の減少の直接の要因として水圧についても検討する必要があることが指摘された。 4.水温と発芽率との関係を室内で調べたところ20℃と25℃で約2%と最も高く10℃以下で発芽しないことが分かった。
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