本年度は、大和川支流の石川の滝畑ダム直下で、人工基盤(コンクリ-トブロック)を瀬に設置し、自然石との密度を比較しながら、シマトビケラ類の移動・定着の季節的変動を中心に、周年調査を実施した。また、紀ノ川など大規模河川の中・下流域でも、シマトビケラ類の分布調査を行なった。 1.シマトビケラ類は、石礫上に固着巣を作る半定着的な生活様式をもつため、従来の流下調査などによる移動分散の研究では、流下や移動を確認することの困難なグル-プであったが、今回の人工基盤を用いた調査では、カゲロウ類などよりは低いものの、予期したより高い比率の人工基盤への移入が確認された。 2.当該地点では、ウルマ-シマトビケラ、コガタシマトビケラともに、越冬世代と非越冬世代との年2化の生活環をもつことが確認された。両世代を比較すると、非越冬世代は越冬世代に比べて、格段に高い移入率であった。移入率の季節(世代)による差異は、他の水生昆虫に比べて大きかった。 3.発育段階による移入率の差は顕著で、1齢、2齢といった若齢幼虫の移入は、終齢の数倍にもなった。シマトビケラ類では造巣場所をめぐっての固体間の直接的干渉が報告されているが、自然河川としてはかなり高い密度である今回の調査地点でも、密度依存的な移入率の上昇は確認されなかった。 4.紀ノ川下流部で、シマトビケラ属3種(ウルマ-、ナカハラ、ギフ)とコガタシマトビケラ属2種(コガタ、エチゴ)が同一地点で高密度で共存している場所が発見された。当該水域で水平的微細分布の調査を実施したが、この資料については現在解析中である。
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