細胞性粘菌(Dictyostelium discoideum)の発生における糖結合性タンパク質(レクチン)であるdiscoidinの役割を明らかにする目的で数種の単クロ-ン性抗体を分離し、それらの抗体の結合特異性をウェスタン・ブロッティング法によって解析して、多量体結合抗体と単量体結合抗体に大きく二つに分けられることを昨年報告した。これらの抗体を用いて、蛍光抗体法、免疫電顕法を実施し、多量体結合抗体は粘菌の細胞内構造である多ラメラ体に局在すること、他方単量体結合抗体は細胞質内に均一に分布し、多ラメラ体には存在しないことを明らかにした。 発生初期におけるdiscoidinの役割として、エサとして摂食した細菌を食胞において消化した。exocytosisによって未消化の多糖を排出して、逆に排出した多糖は細胞性粘菌が移動するさいの基質として機能する可能性が示唆されている。私はこのような多糖の移動に多量体レクチンが機すると考えている。 多量体、単量体discoidinのオルガネラの局在性については、オルガネラの認識部位がdiscoidinに存在し、例えば多量体形成にともなってdiscoidinのコンフォメ-ションが変化し、多ラメラ体認識部位が露出することによって、局在するものと考えた。そこで、そのようなラメラ体認識部位を明らかにする目的でdiscoidinのcDNAの塩基配列の決定を試みた。cDNAライブラリィは粘菌の後期の発生段階におけるライブラリィを基生研から分けてもらい、ポリクロ-ナル抗体でスクリ-ニングして、いくつかのクロ-ンを分離し、塩基配列の決定を行っている。
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