トマト果実から部分精製したACC合成酵素を使って、同酵素の基質SAMによる不活性化反応の機構を検討し、次のような結果を得た。 (1)ACC合成酵素の不活性化反応におけるSAMの2つのジオステレオマ-の活性を比較し、(+)ーSAMが(-)ーSAMより約3倍活性が高いことを明らかにした。 (2)植物体内における(+)ーSAMと(-)ーSAMの存在を検討した結果、(-)ーSAMのみを検出し、(+)ーSAMは検出できなかった。これから、植物体内では(-)-SAMがACC合成の基質になると同時に、ACC合成酵素の不活性化物質として働いているものと推定した。 (3)標識位置が異なる3種類の^<14>C-SAMを用いてACC合成酵素の不活性化反応を行い、SAM分子の2-アミノ酪酸部分が酵素の活性部位近傍に結合することを明らかにした。 (4)SAMによるACC合成酵素の不活性化反応の際に、反応中間体としてL-ビニルグリシンが生成することを推定し、外から加えたL-ビニルグリシンが不活性化作用を示すことを明らかにした。以上の結果から、SAMによるACC合成酵素の不活性化反応の機構を提案した。 (5)^<14>C-SAMを使ってACC合成酵素の不活性化反応を行い、酵素活性部位を特異的に^<14>C標識する方法を開発したことにより、今後、活性部位ペプチドを単離しそのアミノ酸配列を決定する道をひらいた。
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