研究概要 |
ニンジン細胞は微生物の感染等のストレスによってイソクマリン骨格を持つファイトアレキシン,6ーメトキシメレイン(6MM)を生成する。ニンジンの場合、その誘導物貭(エリシタ-)はオリゴウロン酸であるがエチレンや重金属イオンも同様の効果を示した。6MMは酢酸ーマロン酸経路で合成されることがわかったが、その中間産物として6ーヒドロキシメレイン(6HM)の生成が認められた。この6HM合成酵素を部分精製し、各種の物理化学的性貭を調べた。至適PHは8.5で、マロニルCoAに関するみかけ上のKm値は6.6μMであった。また、各種の阻害剤の作用を調べ、酵素の性貭を検討した。 βー1,3ーグルカナ-ゼは各種の植物でストレスに対応して生成することが知られている。ニンジンのβー1,3ーグルカナ-ゼは主として細胞壁に局在する糖たん白貭であった。しかし、阻害剤で糖鎖部分をなくした酵素が生じても、その活性や分泌にはほとんど影響がなかった。ニンジンの細胞壁から酵素を抽出し、ゲル濾過や各種のクロマトグラフィで精製し、電気泳動的に単一のバンドを示す2種のイソ酵素を得た。分子量は共に約63kDで、どちらも約3kDの糖鎖を有し、基貭特異性を類似していた。ラミナリンを基貭としたとき,分解産物としてグルコ-スのみを生ずるのでexo型の酵素と考えられる。酵素の誘導に関し、培養細胞、根の切片等を用いて各種のストレス誘導物貭を試したが、いずれも効果がなく、ニンジンの場合、本酵素の生理的役割が他の植物と異なっている可能性が考えられる。 ダイオウのアントラキノン系色素はファイトアレキシンではないが、培養細胞で、その生成活性が発現していないものにエチレンを作用させると、色素形成が著しく促進され、エリシタ-的誘導効果が認められた。
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