研究概要 |
ニンジンのファイトアレキシンは6ーメトキシメレイン(6MM)であるが、從来このようなイソクマリン化合物の生成経路は明かでなかった。われわれはニンジン培養細胞の無細胞抽出物を用い、この物貭のin vitroでの生合成に成功した。反応はアセチルCoAとマロニルCoAの縮合に始り、中間産物として6ーヒドロキシメレイン(6HM)を生じた。6HMはさらに特異的なメチル化酵素によって6MMに変換される。これらの反応に関係する酵素の活性は健全なニンジンには認められず、微生物の感染やオリゴウロン酸をエリシタ-として与えたときのみ誘導された。エリシタ-活性はエチレンや重金属イオンにも認められた。6HMの生成反応には補酵素としてNADPHを必要とする。NADHはNADPHの40%の活性しか示さない。NADPHを添加せずに反応させると異状代謝物としてtriacetic acid lactoneを生した。この物貭はアセチルCoAにマロニルCoAが2分子縮合して出来たものと考えられ、還元反応がこの段階でおこっていることを示している。ニンジンではこと外に微生物感染等のストレスに対応してキチナ-ゼの誘導的生成がみられる。この場合は糸状菌の菌糸壁の外、培養滬液にもエリシタ-活性が認められたが、エリシタ-の種類によって誘導されるキチナ-ゼの分子種が異り、ゲル滬過によって分子サイズの異る多くのイソ酵素が分離された。糸状菌の菌体成分によって誘導されるキチナ-ゼはすべてendo型であったが、エチレンで誘導される酵素にはexo型のものも含まれていた。タバコ等ではこの外にβー1,3ーグルカナ-ゼの生成誘導が報告されている。ニンジンのグルカナ-ゼは細胞壁酵素で、抽出、精製して電気泳動的に単一バンドを示す2種のイソ酵素を得た。どちらも分子量約63kDの糖蛋白で、ラミナリンに対しexoーグルカナ-ゼとして作用した。 しかし、タバコ等と異り本酵素はconstitutiveで、各種のストレスによっても影響されなかった。
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