ラン藻(シアノバクテリア)では水溶質や膜結合のカロテノ蛋白質が数種単離されてきている。それらの一種の42kDカロテノ蛋白質やカロテノイド組成の変化について、Anacystis nidulans R2を用いて行なった研究で以下のような結果が得られてきた。 1.強光下で培養したA.nidulans細胞は弱光下で培養した細胞に比べてクロロフィルあたりにして2.5倍に増加していた。カロテノイド組成でみるとゼアキサンチンが約2倍になっていて、β-カロテンは逆に減少していた。キサントフィル/カロテン比は3倍になっていた。同様なカロテノイド量、組成の変動は除草剤存在下でもみられた。このことは強光阻害応答の一つとして、カロテノイド変動があることを示す。 2.強光下で培養した細胞から、細胞膜、チラコイド膜を単離して、それぞれのカロテノイド組成を調べた。その組成は通常培養での膜系について報告されている値と同様であった。また細胞膜のカロテノイド組成はN源欠乏培地での値に類似していた。N源欠乏培地では細胞のチラコイド膜含量が減るので、これらの結果は、強光下での各々の膜系のカロテノイド組成はさほど変動しないが相対的にチラコイド膜含量が減少していることを示唆する。 3.強光下培養細胞からの細胞膜、チラコイド膜をSDS-PAGE後ブロッティングし42kDカロテノ蛋白質抗体で調べると、細胞膜画分で検出された。これは低CO_2下に誘導される42kD蛋白質が細胞膜にあるという報告に一致し、42kDカロテノ蛋白質は細胞膜に存すると考えられる。 4.42kDカロテノ蛋白質遺伝子の塩基配列が決定され、弱光下や鉄欠乏培地中ではその発現が抑制されていることがわかった。
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