研究概要 |
前年度の研究をさらに深め,ピレノイドの酵素活性や酵素の存在状態を調べた。 1)免疫電顕法による研究。 (1)金ラベルした抗体を用いて,ピレノイドとストロマ中のRuBisCOの量比を,より正確に測定した。葉緑体のなかで,ピレノイドとストロマ部分での断面の単位面積あたりの酵素量の比は,3:1であった。 (2)ストロマ中のRuBisCOは,チラコイド膜に接して存在しているように見える。以前に葉緑体からストロマとピレノイドを完全に分離して,その分画中の可溶性RuBisCOの量を電気泳動で測定したところ,殆どのRuBisCOがピレノイドの周囲に存在しているという結果を得ている。免疫電顕と抽出実験の結果を併せると,ストロマ中のRuBisCOの多くは,チラコイド膜に固定されていることが予想される。 2)単離された生のピレノイドの酵素活性(論文1) 前年に開発した方法で単離精製したピレノイドは,RuBisCO活性以外にも,硝酸還元活性を持ち,またこの酵素の生産物である亜硝酸も含んでいることが明らかになった。この酵素が葉緑体中の代謝にどの程度関与しているかはまだ明らかになっていないが,最近,葉緑体やピレノイド中での存在が免疫電顕法で確認されている。 3)分子生物学的研究(論文2) 葉緑体の遺伝子ライブラリ-を作り,RuBisCOの大サブユニットの遺伝子をクロ-ニングして,その塩基配列を決定し,他の植物のものと比較した。この遺伝子は,大きなイントロンを持つこと,その塩基配列とRuBisCOのアミノ酸配列の比較から,通常の植物に見られる,N末端のプロセッシングを受けていないことなどが明らかになった。
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