研究概要 |
これまでに、ピレノイドの主成分が光合成の炭酸固定数であるリブロ-ス1,5ー二燐酸カルボキシラ-ゼ(RuBisCO)であるとの報告がなされているので、本年は免疫学的手法と生化学的手法で調べた。 1)酵素抗体法による研究(論文1)。 (1)RuBisCOの大サブユニットのモノクロ-ナル抗体を作り、葉緑体に作用させたところ、ピレノイドとその周囲のデンプン粒の表面に強い反応が現われた。ストロマ中に存在量は少なかった。 (2)藻体の場所による違い 主枝の葉緑体にくらべ、羽状枝のものでは、ピレノイドを囲むデンプン粒の周囲に反応が強く見られた。 (3)培養条件の違いによるRuBisCOの局在場所の違い。 暗所においた羽状枝では、ピレノイドがよく染まらず、デンプン粒の周囲が濃く染色された。成熟した羽状枝の葉緑体では、ピレノイドもその周囲も染まらなかった。 これらのことは、ピレノイド中のRuBisCOの量や存在状態が、葉緑体の場所や生理条件によって変化していることを示しており、ピレノイドが、この藻の活性や生活史に密接に関連していることを暗示している。 2)ピレノイドの単離とその生理活性(論文2)。 ピレノイドはタンパク質を主体としているために、単離を試みると容易に緩衝液に溶解してしまう。このため従来は限られた種からしか無傷のピレノイドは単離されていない。一般には、水銀固定されて不溶化して活性を失ったものが単離されている。本研究では、高浸透圧で強イオン強度の緩衝液に葉緑体を懸濁し、エ-テル液を重層し、急激に攪拌し、葉緑体の破壊とピレノイド抽出を行なった。単離して純化した生のピレノイドは高いRuBisCO活性を示した。
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