本年度は天然湖沼のフイールドを津軽十二湖湖沼群内の7湖沼とし各湖沼の環境分析と植物性プランクトン特にボルボックス科藻類の優占種に着目してその季節的消長を調べた。さらにヘマトコックスの室内培養実験を行い、その生活環における栄養要求、制御因子解析と細胞学的観察をつづけてきた。 1.各湖沼の周年にわたる水温、透明度、PH、溶存酸素量等の変動、現存量に関するクロロフィル量、糖・タンパク質量の変動および湖沼の水質分析としては全窒素、アンモニア態、硝酸態および亜硝酸態窒素、全リン酸、無機リン、ケイ酸および塩素量等に関する定量分析を試みた。その結果約50年前の吉村信吉、小久保清治らの溶存酸素量の調査結果と比較して、無酸素境界層の位置、冬季の無酸素量の深度の移動および溶存酸素量の極大層と季節的変化との関連からほとんど差異が認められず、予想に反して非常に自然状態が維持されていた。さらにクロロフィル量から見た各湖沼の現存量の差異、無酸層にかかわらずクロロフィル量の極大層の存在等その他多くの新知見を得た。 2.ボルボックス科藻類の季節的消長に関する調査結果からEudorinaelegonsとVolvox aureusが優占種として認められた。湖沼によって出現時期と生存深度等に差異が認められた。これらの消長と環境分析結果から現在その相関解析を行っている。 3.ヘマトコッカスの培養系の実験では完全合成培地の作製、各種栄養塩と増殖および生活環制御因子としての役割、蛍光色素法による細胞形態変異の検討等を調べてきた。その結果Ca要求が増殖では少ないが細胞壁の形態維持に関与していることが明らかとなった。又同種内の3株の比較実験から株間に増殖におよぼす栄養要求の差異とアキネート形態の変異が認められた。
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