ボルボックス科藻類はもとより藻類の生活環の制御因子解析に関する研究は人工環境下における培養実験系で行われてきた。一方、これら藻類は自然界、特に成育場所である水圏において多種多様な他の生物と環境に影響をうけながら生存している。生活環の実体と機構解明のために本研究は培養実験と生態学的調査研究の両面から行われ、次のことが明らかになった。 (1)津軽十二湖湖沼群の鶏頭場の池、落口の池、越口の池および王池におけるボルボックス科藻類のVolvox、Eudorina、Pandorinaおよび各種優占植物性プランクトンの季節的消長が明らかになった。 (2)湖沼環境としての下記の因子の周年にわたる量的変動が明らかになった:全-N、NO_3-N、NO_2-N、NH_4-N、Si、Cl、各種クロロフィル量、糖、タンパク、全-P、PO_4-P、水温、溶存酸素、pH等。 (3)ボルボックス科Haematococcusの増殖における栄養要求性、特に窒素源やセルビオ-ス等の炭素源要求性が明らかになった。 (4)H.lacustrisの生活環における耐性体形成および発芽の制御因子が明らかになった。 (5)さらに本研究結果から、藻類の培養系における増殖と生活環の主要制御因子であるアンモニア態および硝酸態窒素が自然界の数百倍から数10万倍であることが明らかになった。このことは培養実験による制御因子解析は異常環境下の研究であると考えられる。従って、本来の生活環制御因子解析研究のためには、自然界に近い培養系の開発と生態学的調査研究がより進められる必要が早急な課題であると結論された。
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