北米東部産のヒヨドリバナ属8種について7酵素種(PGI、PGM、TPI、6PGDH、SKDH、IDH、ALD)の遺伝子数を調査した。これらの酵素種については2倍体植物は通常細胞質ゾルと葉緑体に局在する2つのアイソザイムをもち、これらは核DNAの遺伝子に支配されていることがわかっている。調査の結果、TPIをのぞく6酵素種について遺伝子重複が認められた。PGI、PGMについては葉緑体を単離し、葉緑体に局在するアイソザイムの遺伝子について重複の有無を調査した。その結果、細胞質ゾルPGI、細胞質ゾルPGM、葉緑体PGMの遺伝子が重複していることが示された。 東アジア産のヒヨドリバナ属7種についても同様な研究を行ない、TPIをのぞく6酵素種に遺伝子重複があることを確かめた。 ヒヨドリバナ属の種の染色体基体数はx=10であると考えられてきた。今回22種について体細胞染色体数を調査した結果、いずれも2n=20であり、また核型の上では2倍体と考えられた。しかし多数の酵素遺伝子座に重複が認められることから、n=10という染色体数は倍数体性の起原であり、その基本数はx=5であることが示唆された。 ヒヨドリバナ属を含むヒヨドリバナ連は中南米に多数の属を分化させている。これらのうち、ヌマダイコン属のブラジル産の種でn=5が報告されている。今後はヌマダイコン属の染色体数と酵素遺伝子座数について広範な研究を行なう必要がある。
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