被子植物の花粉は通常同じ種の柱頭に付着すると、花粉管を伸長し生殖核の分裂によって受精能力のある2個の精核を形成する機能をもつ。このような特殊な機能をもつ花粉からプロトプラストを分離し、培養によって細胞壁を再生させた後、本来花粉のもつ機能がどのように発現するか調べ、次のような結果を得た。 1。いろいろな種の花粉からプロトプラスト分離を試み、3年間合計被子植物43種中4種、単子葉植物31種中27種について分離可能であった。その可否は、花粉と花粉孔(溝)の大きさの比に依存した。 2。テッポウユリ花粉から高率(70ー90%)にプロトプラストを分離でき、細胞壁再生後発芽培地上で高率(80%以上)に花粉管を伸長させる実験系を確立した。この再生花粉を柱頭になるべく多く載せる方法を改良した結果、花柱の中を子房まで達することを確認したが種子形成に至らなかった。 3。テッポウユリ花粉プロトプラスト同士を融合させた時、融合細胞数に関係なく伸長する花粉管は1本であった。また、異種花粉同士の融合体も1本の花粉管を伸長し、それぞれの生殖核が分裂した。それぞれの種の柱頭に載せた時、花粉管が花柱を伸長したが、子房まで至らなかった。 4。テッポウユリ花粉と双子葉植物の葉肉細胞と融合させても花粉管伸長能力は発現し、花粉管の中で生殖核が分裂し、また体細胞の核・細胞質も花粉管中を移動した。 5。テッポウユリは品種内不和合であるが、この性質が花粉のプロトプラスト化によって打破されるか検討したが、打破されたという結論には至らなかった。しかし、自家花粉によっても相当花粉管は伸長した。
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