共生緑色渦鞭毛藻の宿主の形態、微細構造を観察し、その分類学的検討を行った。本藻は球形で、体幅20〜30μmであった。横溝が体中央よりやや上部に位置し、その巻進は横幅分で止まっていた。縦溝は横溝との交さ部より同幅で体下部端まで達するが、体上部では著しく狭くなり細胞頂端をほとんど巻いて止まる。また横鞭毛と縦鞭毛の出現部位の間にPeduncleの突起がみられた。本藻は細胞中央に大きな、球形又は卵形の核を有し、染色体は常に縮合し帯状の構造を示していた。クリスタに富んだミトコンドリアが細胞質に散在し、周縁に毛胞及び粘液胞が存在する。細胞表面は無数のバスケット状の鱗片でおおわれていた。鱗片はゴルジ体で生産されていた。細胞膜構造は細胞全体を包む外膜とその下に一列に配列されているVesicle (空胞) からなり、空胞内には何も含まれていなかった。空胞の下に無数の微小官が一列に配列されていた。Peduncle状突起の微細構造は、従来のPeduncleのそれとは全く異なり、束状になった微小官は観察されなかった。鞭毛装置構造は基本的には、今まで報告された構造と類似するが、今までの報告にはないルート構造も観察された。外部形態及び微細構造に関する上記の知見から、本藻はGymnodinium属に極めて近縁の種と思われるが、細胞表面をおおう鱗片が存在すること、鱗片の存否はプラシノ藻やハプト藻では属レベルの形質として評価されていることから考え、本藻を新属新種と判断し、Lepidodinium viridisと命名した。 内部共生藻の系統を考える際に、最も重要と考えられる色素組成の分析手法について、研究推進のための基本的装置の整備としてHPLC (高速液クロ) を設置し、予備的検討を行ったところ、内部共生藻には、クロロフィルa、bの他βカロチン、ビオラキサンチン、ネオキサンチン、ルティンの他未知の物質が4種含まれることが判明した。
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