研究概要 |
昭和63年度,平成元年度の研究において,三陸沖より分離,培養された緑色の渦鞭毛藻の宿主は,渦鞭毛藻網ギムノジニウム目に属する新属新種のLepidodinium virideとして記載されたが,本年度は共生藻の系統を明らかにすることを目的として,そのカロチノイド色素をHPLCを使って分析した。その結果,共生藻にはカロチノイド色素として,ネオキサンチン,ビオラキサンチン,アンテラキサンチン及びβーカロチンの他,2種類の未同定のピ-クが確認された。未同定のピ-クのうち1つは,retention timeにおいてルテインと類似するが,吸収スペクトルはルテインのそれと異なる。もう一方の未同定のピ-クは,量が極めて少いのでこれ以上の解析は困難であるが,ゼアキサンチンではないかと思われる。以上の結果をまとめると,共生藻は基本的には緑色藻類のもつカロチノイド組成を有しているが,ルテインをもたないことが大きな特徴といえる。これまで,共生藻は,クロロフィルa,bをもつこと,同化産物としてデンプンを生産することから,緑藻あるいはプラシノ藻由来と考えてきた。従来の緑藻及びプラシノ藻のカロチノイド色素の分析結果から,プラシノ藻の中には緑藻とは異なるカロチノイド色素をもつグル-プが3群みられるー即ち1)緑藻に通常にみられるカロチノイドに加えてシホネイシをもつもの,2)緑藻に常に,多量にみられるルテインがなく,ゼアキサンチンをもつもの,3)プラシノキサンチンをもつものーことが判明している。結論として,共生藻にはルテインがみられない,及びゼアキサンチンと思われる色素がみられることから,共生藻はプウシノ藻由来のもではないかと思われる。
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