研究概要 |
アフリカツメガエル純系(Xenopus Loevis,LL)とその近縁種で細胞マーカーをもつキタアフリカツメガエル野性型(仮称;Xenopus borealis,BB)を用いて雑種の形成を試みたところ、LLとBBの雑種(LB)はL卵とB精子によって正常に発生することがわかった。また従来不可能とされていた、その逆の組み合わせでも低率ながら雑種個体が得られた。 LL幼生にLBの皮膚を移植することで皮膚に対する免疫寛容性は誘導できたが、その個体にLBの造血組織(胸腺、肝臓、中腎、脾臓など)を移植し、一定の期間の後宿主及び移植された造血器官をキナクリン染色した顕微鏡標本を観察したところ、臓器の実質細胞にはLBの細胞が見られたが、血液細胞にはほとんど見られなかった。 LL胚に対して、LB胚の予定造血組織を移植した後、変態後における造血細胞の前駆細胞が胚のどのような部域に分布しているかを調べたところ、LB細胞は極めて少なく免疫的に排除されている可能性も示された。 以上のように、幼生期に生体の皮膚などで容易に誘導される免疫寛容状態は血液細胞にまでは及ばない、すなわち皮膚に対して寛容になった個体でも血液細胞に対しては寛容になっていないことが推測される結果が得られた。これは予想外の結果であるが、逆にこのことから血液細胞には他の組織と異なる組織適合抗原が存在することも示唆され、興味深い結果といえる。これからは積極的に血液細胞に対する寛容性の誘導を試みていくとともに、血液細胞とそれ以外の細胞がツメガエルの免疫システムでどのように見分けられているのかも解析していきたい。 BBの純系を作出するための兄妹交配は順調に進んでいるが、雌性発生二倍体の作製は、主に技術的な問題から成功例が少なく、多数の個体を得るためには更なる努力が望まれる
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