アフリカツメガエルの幼生は移植片拒絶や、抗体産生といった免疫反応能力をすでに持っているが、変態期に新しく出現してくる成体型抗原に対しては免疫反応がひきおこされることはなく、幼生はそれらに対して寛容性を誘導されているるものと考えられる。変態期あるいはそれ以前のMHCハプロタイプJJの幼生にJB成体の皮膚片(semiーxenogeneic)を移植すると、JJ幼生はその皮膚片を拒絶しない。BBの皮膚片(xenogeneic)だと確実に拒絶されるので、この寛容性の誘導はある程度近縁な細胞に対してのみ起こることがわかる。こうして誘導された寛容性は幼生の変態後も維持され、同じドナ-に由来する皮膚を移植しても生着する。一方、幼生期に寛容性を誘導されなかったJJ成体はJBの皮膚を急性に拒絶するし、JBに寛容になった個体でも異なるハプロタイプを持つ皮膚は急性に拒絶するので寛容性は抗原特異的に確立していることがわかる。一方、幼生に皮膚を移植する際に胸腺摘除を並行して行った実験の結果、この寛容性の誘導のためには胸腺の存在が必要であることがわかった。皮膚移植と胸腺摘除を行うタイミングを様々に組み合わせた実験から、寛容性誘導には皮膚を移植されてからしばらくの期間、胸腺が存在し続けることが必要であることもわかった。 また本研究と平行して継続されているXenopus borealis純系確立については、本研究期間3年の間に兄妹交配を3回繰り返すことができ、当初近交4代目だったものが、現在では7代目の若いカエルが多数得られている。近交6代目のカエルで近交度のチエックの為に皮膚の移植実験をしたところ、主要組織適合抗原はすべての個体でhomozygousになっていることがわかり(移植皮膚片の早い拒絶が見られない)、さらにそれ以外のマイナ-抗原に関しても約40%の個体間で純系化が進んでいる(全く拒絶が見られない)ことが確かめられた。
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