骨格筋トロポニンはT、I、Cの3成分がそれぞれ1分子づつからなるトロポニン複合体として機能する。ニワトリ胸筋の発生過程においては非常に多くのトロポニンTアイソフォ-ムが出現することがトロポニンTに対する抗体を用いて見つけられた。これらのアイソフォ-ムは60を越す種類があり、L、BN、BC、BAの4群に分類され、順次遷移していくことが見つけられた。Lは肢に常に出現し、BNは胚の時期の出現し、BCはぶ孵化後の若いニワトリに出現し、BAは成鶏に出現する成分であった。このトロポニンTのアイソフォ-ム変化にひきかえ、トロポニンIとCは安定した成分として発現されていたので、これらの成分全てを同時に分析する二次元電気泳動法とこれから得られた乾燥ゲルの画像解析法を用いて、ニワトリ胸筋に伴なうT:I:Cの比を測定した。その結果、トロポニンTの激しい成分変化にも拘わらず、T:I:Cの比は1:1:1に保たれ、3者は同調的に蓄積されていることが分かった。このようなアイソフォ-ムの遷移を示す筋肉は他に翼などにも見られ、BN、BC、BAを発現する性質は細胞系列において決定されていることも移植実験から結論された。 たんぱく質の同調的蓄積過程を比較するために、平滑筋におけるトロポミオシンとアクチンの比を測定した。この実験においても比較的多くのトロポミオシンアイソフォ-ムを発見し、大まかに筋肉型と非筋肉型アイソフォ-ムに分類した。アクチンと同調的蓄積を考えるのに筋肉型のみを考慮すると不足するのに対し、非筋肉型を加えると過剰になった。従って平滑筋においては同調的蓄積が見られず、非筋肉型アイソフォ-ムの本来の機能を細胞、組織レベルで検討することが必要になった。
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