ヒキガエル中脳の視蓋を電気刺激すると、一連の摂餌行動パターン(向き直り・開口・舌の打ち出し等) が誘発されることが知られている。 このことから、ヒキガエルの中枢には、摂餌行動の運動パターンを形成するニューロン回路があらかじめ配線として備っていて、視蓋への電気刺激は、この回路を賦活すると考えられている。筋電図解析により、我々は既に摂餌行動時に活動する筋肉の種類とその活動パターンを明らかにしている。また、このパターン形成回路を明らかにする目的で、視蓋から舌筋運動ニューロンへ到る神経路について、その概要を電気生望学的手法を用いて、明らかにして来た。 本研究は、これらの従来の研究をさらに発展させる目的で、舌筋運動ニューロンから細胞の記録を行い、摂餌行動に関して視蓋と密接な関係にあると考えられている視床の回避行動誘発野および視蓋の摂餌行動誘発野を、電気刺激した時舌筋運動ニューロンに誘発されるシナプス電位応答を解析した。その結果、視床からこれらの運動ニューロンへの到る経路は、(1)従来我々が明らかにした視蓋からのそれと同様、多シナプス性の興奮性経路と抑制性経路の両者から成っていること、および(2)視床からの興奮性経路は、視蓋からのそれと共通の介在ニューロンを介していることが明らかになった。これらの結果は、摂餌行動の経路が、従来考えられて来たような、独立の経路ではなく、回避行動等の他の行動の経路と密接な関係を持っていることを示唆している。
|