無尾両生類の仲間が“小さな動くもの"しか捕食しないことは、古くから知られている。また、餌動物は地面や落葉等の背景にカムフラ-ジュされて見分けにくい。視覚的環境をシミュレ-トした装置の中にヒキガエルを入れ摂餌行動がおこる条件を調べた。その結果、ヒキガエルは、視野内の局所的な運動に対して摂餌行動を行うが、視野内の広い範囲に拡がる運動に対しては、摂餌行動を行わないことが分った。 そこで、『ヒキガエルの視覚系に視野内の広い範囲に拡がる運動には応答しないが、視野内の局所的な運動に対して選択的に運動するニュ-ロン(local motion detector)が存在するか?』という設問をたてて、視覚生理学的実験を行った。その結果、ヒキガエルの視蓋にそのようなlocal motion detectorが多く存在することが判明した。これらのニュ-ロンは、小さな対象が背景上を運動するときや、背景の小部分が背景の向う側で運動するときには応答するが、大きな対象や、背景の大きな部分または背景全体が運動するときには応答しない。さらに、背景が対象と共に運動するときには、応答が抑制される、等の性質を示すことが分った。これらの性質は、上記のlocal motion detectorの性質と合致しており、餌対象の視覚的検出に関与していると考えられる。
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