| 研究概要 |
ウニ未受精卵から酸性海水(pH4.5)による抽出物(Egg Extract, EE)は、未受精卵においては、前核の移動や単星状体の形成を、また、受精卵においては、卵割の促進や胚の動物極化をひきおこすことが見いだされている。これら
EEの作用のうち、特に卵割を促進する作用に注目して、その有効成分を精製・災同定し、かつ、その作用機構を明らかにすることが、本研究の目的である。EEの卵割促進作用は、コロジオンバッグ透過性(分子量<12,000)の成分にも、不透過性(分子量【greater than or equal】12,000)の成分にも、認められ、昨年度までの実験結果から、コロジオンバッグ透過性の成分に含まれる卵割促進に有効な分画は、分子量約500以下のヌクレオチドか、もしくは、ヌクレオシドである
しかし、上述のような有効成分を、マススペクトロメトリ-により分析するためには、かなりの量を集めることが必要であるので、そうした作業と平行して、今年度は、コロジオンバッグ不透過性の有効成分の分離・精製を試みた。その結果、DEAE Sephadex A-50のカラムにかけて分離した分画の1つに、卵割促進効果が認められた。この分画には、量的には少ないものの、蛋白質が検出されたので、核酸様物質に蛋白質が結合したものであるという可能性が出て来た。更に興味深いことに、コロジオンバッグ不透過性の成分には、卵割を阻害する物質を含まれていることが明らかとなった。
また、EE処理により、ウニ未受精卵内の有利Ca^<2+>濃度や、細胞内pHの上昇はみられなかったが、アルギニンリン酸量は受精卵での値近くまで増加することが判明した。このような結果と、EE処理による卵割促進との関係については、更に一層の研究が必要ではあろうが、卵割促進機構の解析のための1つの手掛かりになるものとして大いに期待される。
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