アラレボヤのストロン(芽茎)は親固体から人為的に分離させられると4-5日で完全な1個体に発生するが、ストロンをさらに切断したり結紮したりすると、2個体以上になる。後者の場合、固体形成のための形態形成中心が2つ以上つくられなくてはならないが、本来、等価値の細胞群の中にいかにして形態形成中心がつくられるのか、ということが本研究で取り扱う問題である。 本年度は3つの問題について、研究を進めたが、そのうち2つについては一応の結論を得ることができ、残りの1つについては明年度以降さらに研究を続ける必要がある。 第1は、ストロンが短小化し、芽体が球形になる時期に形態形成中心が作られることが分かっているが、ここで、ストロン短小化の機構が問題になる。そこで、短小化と細胞分裂や、細胞内骨格との関係を調べるため、ストロンを種々の濃度の微小管や微小繊維形成阻害剤で処理して、短小化への影響を見るとともに、蛍光抗体法により、Fアクチンの存在や局在性を調べた。その結果、コルヒチンは短小化を阻害しないが、サイトカラシンは短小化のある段階以後短小化を阻害すること、Fアクチンもその段階以後、上皮に多く出現することなどが分かった。 第2は、従来に研究で、ストロンを2分した場合、片方だけが発生することがしるが、その場合、基部側の芽体の方が、頂部側より発生しやすい蛍光がみられた。この発生能の勾配がはたして存在するのか、存在する場合、いつ頃から存在するのか調べた。その結果、発生能の勾配はストロン切断当初より存在することがわかった。第3の問題は、発生してくる個体数と短小化終了時に存在する内胞の数が果たして一致するのかどうか、つまり、内胞1つについて、1個体が作れるかのかどうか、という問題で、これにつていては明瞭な結論が得られなかった。
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