研究概要 |
この研究で私達はアフリカツメガエルのCa^2依存性細胞接着分子カドヘリンが胚発生に伴ってどの様に遺伝発現を変化させていくかを、抗体や遺伝子を用いて研究した。まずカドヘリンに対する各種抗体を用いた発生中の胚の組織化学的分析とウエスタンブロット法による分析を行い、カエルにもN-,E-カドヘリン(132kDaと120kDa)が存在すること、および全く知られていなかった血管内皮細胞のカドヘリンの存在を明らかにし、このカドヘリンをVascularカドヘリン(V-カドヘリン)と命名した。これは脊椎動物で未同定だったカドヘリンの初めての同定(140kDa)であり、医学生物学への今後の著しい貢献が期待されている。 V-カドヘリンに対して私達のとったモノクロ-トル抗体数種を用いてλg+リライブラリ-をスクリ-ニングして、このカドヘリンのCDNAを分離し塩基配列を一部決定した。このV-カドヘリンに対する抗体は胞胚以前の細胞のCa^<2+>依存性細胞接着を完全に阻害しその効果は可逆的であった。さらにV-カドヘリンのCDNAクロ-ンで卵母細胞(V-カドヘリンは存在しない)のCDNAライブラリ-をスクリ-ニングはた結果、全長と考えられるCDNAクロ-ンが得られた。この接着分子はカドヘリンに共通にみられる細胞質側の共通アミノ酸配列を含んでおらず、カドヘリンと関連するが分子量の1/2以下の新しい接着分子と考えられ研究をつづけている。 現在、この研究で明らかにしたN-,E-,V-カドヘリンや上記接着分子の卵母細胞にある母性mRNAをこれらに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドで特異的に消去する方法の基礎的予備実験(特に合成したオリゴヌクレオチドの毒性消去法の確立)を終了しており、この手法を用いた接着分子の初期胚発生での役割評価を開始している。この研究と、抗体による初期胚割球相互作用停止の実験によって初期胚での細胞相互事用と遺伝子発裏の関係の解明が可能となったといえる。
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