研究概要 |
1.寒天に吸収させた各種味物質のうち、Xenopus borealis(X.b.)およびXenopus leavis(X.l.)はL-Pro,L-Trp,L-Valに対して摂取行動を、L-Arg,キニ-ネ、塩酸に対して拒否行動を示した。一般に、X.b.の方がX.l.よりも閾値が低く、行動も活発であった。キメラでは、X.b.の左右半側に関係なく、X.l.に似た行動がみられた。 2.ポンソ-S染色により確認された味蕾は口腔内の上顎側で約300個、下顎側で約200個で、口唇部、内鼻孔周辺部で高密度に分布していた。X.b.,X.l.およびキメラ間で味蕾の分布に顕著な差異は認められなかった。キナクリ染色により、キメラのX.b.起源の側の味細胞は同側性に分布していることがわかったが、正中線よりどの程度反対側へ浸入しているかは明確にすることはできなかった。一方、味中枢(延髄)ではニュ-ロンは同側性に分布することがわかった。このことはHRP法によっても確認された。 3.X.b.およびX.l.の舌咽神経の味応答を6系統60種の味物質について記録し、両種間に次のような差異のあることがわかった。 (1)アミノ酸の中でL-Pheは用いた全濃度で、L-,D-TrpおよびL-,D-Tyrは特定の濃度範囲で顕著な差を生じた。 (2)四基本味質のうち、キニ-ネおよびストリキニ-ネ応答が広濃度範囲で顕著な差異を示した。 (3)核酸関連物質の中ではアデノシンに対してX.b.が応答を示し、X.l.は最高濃度でもわずかな応答を示すだけであった。 これらの味物質を用いたキメラのX.b.およびX.l.起源の舌咽神経の応答性は、基本的には、その種由来の応答性に類似していたが、キメラの加令とともにX.l.由来の応答性に移行する傾向が認められた。加令に伴う味細胞の神経支配の変化が示唆される。
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