水流に対するサケ稚魚の遊泳行動を観察するため、円形の水路実験槽(水循環、水温調節付)を作成し、ビデオ録画装置により行動分析を進めてきた。一般魚類と同様に孵化直後のサケ稚魚及び成魚は正の向流性を持っていて、水路実験槽のなかでは流れに逆らって一定場所に定位しようとする性質が基本であった。しかし、孵化後2ヶ月を過ぎると水流に対する反応性が逆転し、頭を水流の下手に向け(負の向流性)、流速(5〜7cm/sec)よりも早く(17cm/sec)泳ぎ続けるという積極的な降河現象を示すようになる。この現象の行動誘発には浮上期(産卵床から水中に泳ぎ出る)以後、サケが流水中に放たれる前に一定期間止水中に留め置かれていることが条件であった。 申請者らが見い出したサケ稚魚の水流に対する走性の変化(水流に添って泳ぎ続ける)は一週間から十日ほど続くが、その後はまたもとの正の向流性(流れに逆らって一定場所に定位する)にもどるが、水流に添ったサケ稚魚の遊泳速度とその行動の持続時間を計算してみると、サケ稚魚は容易に産卵床より河口に達することがわかった。 申請者の研究室において、サケの淡水及び海水長期飼育実験がつづけられている。現在(1年9ヶ月経過)、体長は約30cmに達し、卵巣は淡水及び海水飼育個体とも発育してきている。卵も成熟してきたことを確認した。
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