水流に対するサケ稚魚の遊泳行動を観察するため、円型の水路実験槽(水循環、水温調節付き)を作成し、ビデオ録画装置により行動分析を進めてきた。一般魚類と同様に、孵化直後のサケ稚魚および成魚は正の向流性を持っていて、水路実験槽の中では流れに逆らって一定場所に定位しようとする性質が基本であった。しかし、孵化後2ヶ月を過ぎると水流に対する反応性が逆転し、頭を水流の下手に向け(負の向流性)、流速(5〜7cm/sec)よりも早く(17cm/sec)泳ぎ続けるという積極的な降河現象を示すようになる。この現象の行動誘発には浮上期(産卵床から水中に泳ぎ出る)以後、サケが流水中に放たれる前に一定期間止水中に止めて置かれていることが条件であった。 申請者らが見い出したサケ稚魚の水流に対する走性の変化(水流に添って泳ぎ続ける)は一週間から十日ほど続くが、その後はまたもとの正の向流性(流れに逆らって一定場所に定位する)に戻るが、水流に添ったサケ稚魚の遊泳速度とその行動の持続時間を計算してみるとサケ稚魚は容易に産卵床より河口に達することがわかった。申請者の研究室においては、サケの淡水長期飼育実験が続けられている。孵磯後1年9ヶ月経過すると体長は約30cm程になり、孵巣および精巣の発育も確認された。しかし、その後、餌の摂取が止まり、衰弱して死亡してしまう個体が続出する。このような現象は9月から11月にかけて観察された。当研究室での最長飼育期間は申請者の研究室においては、サケの淡水長期飼育実験が続けられている。孵化後1年9ヶ月経過すると体長は約30cm程になり、卵巣および精巣の発育も確認された。しかし、その後、餌の摂取が止まり、衰弱して死亡してしまう個体が続出する。このような現象は9月から11月にかけて観察された。当研究室での最長飼育期間は2年3ケ月であり、体長は33cm、雌の個体(卵巣確認)であった。 現在、サケ稚魚の水流に対する走性の変化期、および淡水から海水への移行期における脳内および皮膚組織のモノアミン系物質の変動を高速液体クロマトグラフィ-を用いて調ベている。
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