味覚受容細胞と求心神経間の機能的結合を明らかにするには、両者についての形態学的および神経生理学的知見が必要である。本年度は舌咽神経の形態を明らかにし、その細胞体からの細胞内記録を行なった。 1.舌咽神経の形態:メキシコ産サンショウウオ(アホロートル)の舌咽神経を神経節より遠位で切断し、コバルトーリジン複合体(Co-lys)を取り込ませた。Co-lysは神経節内の細胞体と神経突起を標識した。細胞体の長径は平均23μm(1627個の細胞で測定)で、単峰性の分布が得られた。細胞体と突起が明確に標識された細胞の形態は偽単極型であった。細胞は神経節の吻外側および腹側で長軸方向に疎に分布していた。ホ乳類やカエルで見られるようなjugular ganglionとpetrosal ganglionの区別は明確でない。さらに少数の細胞が迷走神経線維が通過する尾外側部に分布していた。そこで、舌咽神経の細胞体の分布を迷走神経と関連させて明らかにするため、HRPとCo-lysによる二重標識を行なった。その結果、迷走神経の細胞体が密に分布している部分にも、これらに取り囲まれるように舌咽神経の細胞体が分布していることが確認できた。しかがって、アホロートルの舌咽神経は迷走神経と複合した神経節を形成している。 2.舌咽神経節内での細胞内記録:神経節の構造が明らかになったので、神経節を生体より切り出し生理食塩中で、その腹側部にガラス微小電極を刺入し、細胞体から静止膜電位と活動電位を記録した。強い通電刺激では頻回性の活動電位が誘起された。 3.次年度の研究の展開:舌咽神経節の形態が明らかとなったので、次の実験が行なえよう。 (1)細胞内記録とCo-lys標識により、舌咽神経感覚ニューロンを形態的機能的に同定する。(2)下行性輸送による標識法により、舌咽神経末端と味細胞を標識し、両者の構造と機能を明らかにする。
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