味覚受容細胞と求心神経間の機能的結合を明らかにするには、両者についての形態学および神経生理学的知見が必要である。実験動物としてアホロ-トルをインディアナ大学の協力により、定期的に空輸した。アホロ-トルの味蕾の構造はホ乳類と比べ単純であり、舌咽神経の形態学的解析にはCo-lys法が有効である。 各種化学刺激に対する応答を舌咽神経から記録した。4基本味質のうちでは塩味が最も有効であるが、アミノ酸類は50mMの高濃度でも有効でない。舌咽神経は機械受容性の太い神経線維も含むことも示唆された。 Co-lys法で、舌咽神経細胞体の大きさと神経節内での分布を調べた。平均直径23μmで、突起が区別できるものでは偽単極型である。細胞体は神経節の主として吻側部にほぼ一様に分布するが、その一部には迷走神経の細胞体が混在していることが、Co-lysとHRPの二重標識法で示された。これらの分布様式はホ乳類やカエルの舌咽神経節の場合と大きく異なる。 舌咽神経の求心神経は脳幹内で孤束を形成し、一部は三叉神経脊髄路内にも入る。両者はともに上行性と下行性の線維に分れる。同側の脳幹内には、遠心神経の細胞体が30個前後みられ、吻尾に長く伸びた細胞集団を形成する。細胞体はよく発達した樹状突起を腹外側方向へ伸す。これらの構造は基本的には、カエルのものと類似する。 舌咽神経末端の味蕾への神経支配を明らかにするため、固定標本でも標識が可能と言われている、蛍光色素DiIを神経の末梢側断端に与えた。舌上皮直下の神経末端が観察できた。末端の観察には厚切り切片(200ー300μm)、味蕾内の細胞には薄切り(50μm以下)が都合がよい。蛍光標識を両者の折衷点で観察するための条件を現在検討中である。in vivoでの標識も継続して行なっており、神経応答の記録と合せて標識することが、今後の課題である。
|