ニワトリの松果体から分離精製したpoly(A)^+RNAを用いてGublerらの方法でdscDNAを合成し、λgt10ベクターに組み換えてCDNAライブラリーを作成した。前年度に単離したニワトリ肝臓のN-アセチル転移酵素(NAT)のCDNAをプローブにして、松果体のλgt10-CDNAライブラリーをスクリーニングした結果、新たに2種類のアリルアミンNATをコードするCDNAクローン(pNAT-3とpNAT-10)を単離することができ、その塩基配列およびアミノ酸配列を決定した。すなわち、pNAT-3は1920塩基対、pNAT-10は2155塩基対から成り、いずれも290個のアミノ酸をコードしていたが、アミノ酸配列のホモロジーは60%で余り高くなかった。2つのCDNAをChinese hamster ovary cells(CHO細胞)に導入して発現させ、いずれもアリルアミンに対してNAT活性を示すことを確認した。また、これら2つのCDNAについて、サザーンおよびノーザンブロッティング法を行い、これらの遺伝子について若干の知見を得た。さらに、これら2つのCDNAから発現されたタンパク質と、ニワトリの松果体、脳、腎臓を各々ホモジナイズして得た上清とをDEAEセルロースカラムにかけ、NAT活性の溶出パターンを比較検討した結果、pNAT-3が脳の溶出パターンと一致し、松果体でも相当するピークが観察された。またpNAT-10は腎臓の溶出パターンと一致し、松果体では相当するピークはかなり小さいが観察された。 以上、今年度は、ニワトリ松果体のλgt10-CDNAライブラリーより、新たに2種類のアリルアミンNATのCDNAをクローニングし、その塩基配列およびアミノ酸配列を決定するとともに、CDNAから発現されたタンパク質の諸性質を検討した(投稿準備中)。
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