本研究では、当初目的としたメラトニン生合成系に関与するアリルアルキルアミンNATのcDNAをクロ-ニングできなかった。しかし、ニワトリ松果体のλgt10cDNAライブラリ-から、新たに2種類のアリルアミンNAT(p-NAT-3とp-NAT-10)をクロ-ニングし、その全塩基配列を決定した。2つのcDNAはいずれも290個のアミノ酸をコ-ドしており、p-NAT-3、p-NAT-10および肝臓のNATのアミノ酸のホモロジ-は約60%であった。ノ-ザンブロット法から、p-NAT-3とp-NAT-10はともに2.2-kbのmRNAをもち、p-NAT-3は脳と腸に、p-NAT-10は腎臓に特異的に存在することが判った。またgenomicサザンブロット法からp-NAT-3、p-NAT-10および肝臓のNATは別の単一遺伝子にコ-ドされていることが明らかになった。形質転換細胞内で発現されたp-NAT-3、p-NAT-10由来のNATおよび松果体、脳、腎臓のホモジナイズのNATを各々DEAEセルロ-スカラムにかけ、その溶出パタ-ンを比較したところ、p-NAT-10と腎臓のNATはカラムを通過し、またp-NAT-3と脳のNATは0.08MのNaClで溶出された。松果体のNATは2つのピ-クを示し、各々腎臓と脳のNATの溶出位置に一致した。類種のアミン化合物を基質としてp-NAT-3、p-NAT-10由来のNAT活性を検討した結果、いずれもアリルアミンに対して高い活性を示し、アリルアルキルアミンにはほとんど活性を示さなかった。 これまでに我々がクロ-ニングしたニワトリの3種のNAT(肝臓、p-NAT-3、p-NAT-10)のcDNAの構造から、システイン残基を含みかつ塩基性アミノ酸を多く含んでいる部分がNATの触媒部位と考えられる。従って、今後この部位に相当するオリゴヌクレオチドをプロ-ブにして松果体のcDNAライブラリ-をスクリ-ニングすることによって、アリルアルキルアミンNATのcDNAをクロ-ニングできると考える。
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