ティラピアの黒色素胞が初代培養色素胞として利用可能であることがわかった。あらかじめコラーゲンとファイブロネクチンを細胞培養液に混合し、その溶液中に組織から分離した黒色素胞と、カバーグラスを入れて48時間、21-25℃でインキュベートした結果、種々の実験操作に耐え得る高い細胞接着性を有する標品とすることができた。 まず培養黒色素胞内顆粒運動におけるカルシウムイオンの役割を検討した。カルシウムイオノフォア(A23187)で細胞を処理し(1〜3分間)、イオノフォア共存下で細胞外に各種濃度のカルシウムバッファーを入れて効果を調べた結果、高濃度のカルシウムイオン存在下では色素顆粒が凝集することがわかった。閾値は10^<-7>M程度であった。さらに、カルシウムインジケーターQuinIIにとFuraIIを培養色素胞にとりこませ、外液にノルエピネフリンを投与した時に、細胞から発する螢光強度がどのように変化するかを調べた。ノルエピネフリン投与直後に螢光が急激に強まり、細胞内で遊離カルシウムイオンの濃度が増加したことがわかった。この反応はアドレナリン受容体阻害剤のフェントラミンの存在によって抑えられた。また、表面活性剤Brij58で処理した細胞モデルにおいて、イノシトールミリン酸の投与が色素顆粒凝集を誘起するらしいことが確認され、今後さらに検討の必要があろう。カルシウムイオン濃度増加との関連で興味深い。一方、ティラピア黒色素胞においては、コルヒチン、ビンブラスチンが顆粒運動を阻害した。間接螢光抗体法により、これらの薬物処理を受けた色素胞では、明らかに微小管の放射状配列が乱れていることがわかった。サイトカラシンBは阻害効果を示さず、螢光抗体法による検索でも微小管の配列はコントロールと同様であった。これらの結果より、微小管の関与が強く示唆された。アクチン抗体での検索が引き続いて行われる予定である。
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