研究概要 |
63年度中に購入した落射蛍光装置の一部(励起フィルタ-・対物レンズ)を顕微鏡にセットすることにより,蛍光顕微鏡が完成し,チュ-ブリンやアクチンの標識抗体を用いての観察を行った。チュ-ブリン阻害剤であるコルヒチンやビンブラスチンで,ティラピアの一次培養黒色素胞を処理すると,細胞内の微小管の放射状配列は見事にくずれることがわかった。これらの色素胞は,ノルエピネフリン刺激に対して反応性を低下させることから,色素顆粒の凝集には微小管の放射状配列が必須であると結論づけた。一方,アクチンの阻害剤であるサイトカラシンBで色素胞を処理すると,アクチンの細胞膜直下の層状配列は乱れるものの,顆粒凝集が有意に阻害されることはなかった。これらの結果の一部はすでに投稿し,受領されている(Comp.Biochem.Physiol,1990)。さらに,表面活性剤Brii58を用いての細胞モデル作成法を検討し,イノシト-ル 三リン酸(IP_3)の作用を調べた結果,細胞内に浸透したIP_3が顆粒凝集を誘起することがわかった。また,ノルエピネフリンの投与がティラピア黒色素胞内のCa^<2+>の濃度上昇をもたらすことも,Ca^<2+>-インジケ-タFura2を用いての蛍光強度の測定から明らかとなったので,アドレナリン性受容体α_1型を介して細胞内IP_3の濃度が増加し,小胞体膜上のIP_3-結合タンパク質(IP_3受容体)の作用を介して細胞内Ca^<2+>の濃度上昇が起こり,このCa^<2+>がカルモジュリンを活性化すると予想される。カルモジュリン阻害剤のW-7は顆粒凝集を抑制するが,プロティン-キナ-ゼCの阻害剤H-7は全く無効であることがこの予想を裏づけている。これらの結果はまとめてごく最近投稿された。その他,ティラピアやルリスズメダイの黒色素胞のアドレナリン性受容体はα_2型がドミナントであることが示唆されたので,平成2年度に詳細な検討を継続する予定である。さらに細胞内pHの顆粒凝集に対する効果も予備的に調べられた。
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