昨年度に引き続き、筋原細胞の増殖と分化を制御する液性因子を精製すること、およびその因子の性質、作用機序の解析を試みた。原材料としては、これまでinvitroで強い筋原細胞成長促進活性、および筋芽細胞融合遅延活性を持つことが知られているニワトリ胚抽出液を、アッセイ系としてはウズラ胚胸筋筋原細胞培養系を用いた。昨年度において、硫安塩析、CMセファデックスイオン交換クロマトグラフィ-、ヘパリンアフィニティ-クロマトグラフィ-を用いて約10^5倍に精製し、1ng/m 以下の濃度で筋芽細胞の増殖を促進し、筋芽細胞の融合を遅延させる繊維芽細胞成長因子様の標品を得ることに成功したが、電気泳動的にはまだ夾雑物が存在することが示されたものであった。今年度の第一の目標はこの標品の精製度をさらに上げることであった。 先ずヘパリンアフィニティ-クロマトグラフィ-から目的因子を溶出させる時に用いるNaClの濃度を再検討した。すなわち、従来は1M溶液でカラムを洗った後、2M溶液で因子を溶出したいたが、溶出濃度を細かく切って試みてみた。しかし、結果は期待に反し、夾雑物の見られない標品を得ることはできなかった。そこで次に、他のヘパリン結合性細胞成長因子の精製に極めて有効であることが知られている逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィ-系を利用して精製することを試みた。しかしながら、この試みも良い結果は得られなかった。すなわち一般に有効とされるアセトニトリル系の溶媒は因子の活性を喪失させ、また試みられた他の溶媒系も失活を招く結果となった。これらの失活の原因は残念ながら未だ不明であり、今後溶媒条件、カラムの種類などを再検討して所期の目的を達成したいと思っている。
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