研究概要 |
1.雄マウスの性誘引物質 雄の尿中に含まれ,雌を誘引する嗅覚情報物質として,尿中の2種類の物質と包皮腺分泌物が主要な因子であることは既に報告したが,これら以外にも効果を補完する因子が尿中に存在することが分かった。(木村) 2.誘引物質に対する雌の反応 雄の誘引物質の存在下で雌の尿マ-キング行動を観察した結果,雌の尿マ-キング活性は誘引効果には比例しないことが分かった。従って雌の尿マ-キングは必ずしも性的動機づけのみに支配されているのではないと結論された。(木村) 3.マウス父性行動の制御要因の解析 雄マウスは通常は子育て行動を殆ど示さないが,つがいの雌が出産するとリトリ-ビングや巣造りをするようになる。父性行動発現を制御する外的要因を解析した結果,雌との交尾経験がもっとも重要な発現促進要因であることが明らかになった。(木村) 4.ヤマネの行動生態と冬眠 ヤマネは日本特産の齧歯類だが,その行動生態は殆ど研究されていない。今回野外および飼育下での研究の結果,ヤマネは孤独型の放浪生活者であり,昆虫を主食とし,秋季に断続的休眠を行ってエネルギ-を節約するが,体重が一定レベルまで減少すると冬眠に入ることなど,これまで知られていなかった事実が数多く発見された。(木村) 5.野生齧歯類の尿マ-キング行動 野生のヒメネズミおよびアカネズミの尿マ-キングを飼育下で調べたところ,ヒメネズミはマウスと同様の性差や他個体の存在に応した変化を示したが,アカネズミではこのような現象はみられなかった。嗅覚コミュニケ-ションの生態学的意味を探る上で興味深い。(堂前)
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