小型サンショウウオ数種をはじめとし、オオサンショウウオ、イモリ類という代表的な日本産有尾類について、電気泳動法を用いて遺伝的変異を調査し、その結果を形態・生態・生物地理などの側面から比較検討して、諸系統に共通な特性、各群に固有の特性を明らかにした。(1)北海道産のキタサンショウウオは独立属として問題がないこと、エゾはトウホクと一群をなし、ヒダから分岐したと推定され独立属とできないことがわかった。これらの種は非常に早い時期に分化を起こし、キタは他から中新生中期に、エゾは鮮新生に止水性の群と分岐したと推定された。(2)佐渡島固有のサドサンショウウオは、本州産クロと遺伝的にあまり分化しておらず、両者が同種であることは疑いない。(3)エゾサンショウウオの帯広産2個体群は遺伝的に千歳産から区別され、形態の相違と一致しなかった。(4)オオサンショウウオ1個体群のすべての個体は遺伝的に均質で、生態的危機をまぬがれた少数個体をもとに個体群を維持していると推定された。(5)イボイモリの奄美・徳之島間の分化程度は低いが、これらと沖縄との間には分化が見られる。この種は通常発見されるよりは個体数が多いと推定される(6)東日本産のイモリ、東北品種と関東品種は遺伝的に分化しているが、東北産品種の分化程度は関東産より低、関東品種中には人為的に移入されたものが含まれている。(7)日本産と別属のホンコンイモリは日本産と非常に近く、イボイモリ類は遺伝的に2属に区別できない。
|