研究概要 |
1988年度には雌ラットの性行動に延髄の縫線核の一つRaphe obscurus nuclesuが抑制的に働いている事を報告したが、今年度は延髄の縫線核群が雄ラットの性行動の制御にどのように関係しているか明らかにした。 雄ラットを去勢すると同時に、延髄の縫線核(Raphe pbscurus nucleus,ROBまたはRaphe magunus nucleus,RMG)の高周波破壊を行ない、4-5週間の回復期間の後、テストステロンをつめた5cmのサイラスチックチュ-ブ(内径1.57、外径3.18mm)2本を皮下に挿入して、一週間おきに3回の性行動観察をおこなった。ROBを破壊するとマウントの回数が減り、特に挿入の数が極端に減少した。射精は3回のテストをとおし全く見られなかった。RMGを破壊したラットは去勢しただけの対照群と行動の回数や射精数はそれほど変らなかった。このように雌の場合とは逆にROBを破壊すると性行動が極端に低下してしまう現象がみられた、おそらくROBは雄の性行動、特に挿入の発現に対し重要な働きをもつものと推測できる。ROBを破壊されたラットは発情した雌に興味を示し、追いかける事をするので、発情そのものを阻害された分けではなく、また、通常の運動系が阻害されたのでも無く、雄特有の性行動パタ-ンであるマウント、挿入といった動きを発現するシステムが阻害されたものと考えられる。 ROBは脊髄にセロトニン神経線維を投射している事が解剖学的に明らかになっているが、この実験における結果がセロトニンニュ-ロンを破壊した為か別の神経が関与しているのか調べる為にROBを破壊した雄ラットにホルモンと同時にセロトニン合成阻害剤であるパラクロロフェニルアラニンを投与して影響を見ているところである。
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