研究概要 |
北海道室蘭・臼尻および沖縄県名護に出張して、深海性魚類から寄生虫の採集を行った。現在吸虫類などの染色プレパラ-ト標本を作製中である。北海道太平洋岸の深海性魚類から得られた線虫は次のとおりである。1)Anisakis simplex幼虫:イラコアナゴ、ムネダラ、カンテンゲンゲ、サメガレイの体腔から得られた。2)Anisakis physeteris幼虫:イラコアナゴ、イトヒキダラの体腔から検出。3)Hysterothylacium aduncum:マダラ,スケトウダラ,アバチャン,ヌイメガジ,タウエガジ,オクカジカ,オニカジカ、ガンコ、アカガレイ、サメガレイ、アブラガレイ、ソウハチの腸管から得られた。なおHysterothylacium属の幼虫がムネダラ、アバチャン、カンテンゲンゲ、コオリカジカ、チカメカジカ、オニシャチウオの体腔などから検出されている。4)Cucullanus heterochrous:カンテンゲンゲ、シロゲンゲ、ババガレイの腸管から得られた。5)Cucullanidae gen.sp.:ホラアナゴとイラコアナゴの腸管から検出。体長は雄で15.1〜18.9mm、雌で24.9〜28.1mm。口は円形、食道の前部は口腔様にふくらみ、その後急にくびれたのち徐々にふくらんで、後端近くで最大巾となる。頚乳頭と排泄口は食道の前1/3に位置する。雄の交接刺は長さ4.4〜5.0mm、副交接刺を備え、後部乳頭は11対。雄の陰門は体の後1/3に開き、虫卵の大きさは75〜90×50〜61μmである。本種に近線のCucullanus属のものと比較して、口が円いこと、食道前部が口腔様にふくらむこと、交接刺が非常に長いことなどで異なる。恐らく深海性のホラアナゴに特有の未記載種と思われる。なおこれら線虫の詳細については第59回日本寄生虫学会学術大会(平成2年4月)で報告し、後日誌上で発表の予定である。
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