これまでの研究で、神経回路の可塑性について生体で実験をおこなうことの不便さを痛感した。そこで、最終年度では、培養法を利用して生体外で神経回路を形成させ、その可塑性を調べる研究を開始した。まず培養神経細胞の発達の様子を調べた。 胎齢14ー18日のラット大脳皮質ニュ-ロンを培養し、3日、1、2、4、8週後で固定し、ニュ-ロン突起の発達の動態及びシナプス形成を調べた。樹状突起の発達の様子を、MAPー2に対する抗体を用いて免疫組織学的に検索した。培養3日目では、細胞は紡錘型で樹状突起は短く未発達であった。1週後、突起は長くなり、2週後、突起は著しく伸び、細胞体も大きくなり錐体型を示すものがあらわれる、4週後、ニュ-ロンはさらに発達し形態学的特徴から数種類のニュ-ロンが区別できた。また、電子顕微鏡で観察した結果、シナプスは培養1週後に確認できた。2週後、シナプス数は増加し、以後3週および4週目でもほぼ同量のシナプスが認められた。これらの形態学的結果から、培養系における大脳皮質ニュ-ロンの発達は、in vivoの発達の動態とかなり類似していることが明らかになった(第14回神経科学学術集会で口頭発表)。 このような培養系での神経回路形成の研究を進めることにより、培養系での神経回路の可塑性の研究により、実験動物を利用して生体内で行なうことが不可能な実験を可能にすることができる。今後、この分野の研究をおおいに進めることができる。
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