研究概要 |
1.パンケヌシ斑れい岩体は日高火成活動帯を代表するソレアイト質層状分化岩体であるが、この岩体のSr同位体比の垂直変化を検討した。その結果,Sr同位体は層序的下位から上位に向かってほぼ連続的に増加していることが判明た。つまり、最下位のトロクトライトでは0.70256であり、最上位の鉄斑れい岩では0.70405であった。この変化は単純な分別結晶作用では説明できない。Sr同位体(およびNd同位体)的にMORBに類似する玄武岩質マグマが分別結晶作用を行なうと同時に、高いSr同位体比を持つ物質を取り込むというようなプロセスを想定することが必要である。パンケヌシ岩体の東に露出するカルクアルカリ質の芽室岳岩体は、0.7025程度の低いSr同位体比を持つ塩基性岩類と0.7048程度の高いSr同位体比を持つ酸性岩類が不均質な産状を示すことから、マグマの混合が想定されていたが、パンケヌシ岩体のようなソレイアイト質の層状分化岩体においても同様なプロセスが起こっていたものと考えられる。今後は記載岩石学や岩石化学的情報を再検討し、このようなプロセスの実態を明らかにすることが必要である。 2.日高火成活動帯北部の奥士別岩体から中性から酸性に及ぶアイスランダイド組成の分化岩脈が発見された。この岩脈の存在は日高火成活動にFeやTiに富むような分化系列を示す火成活動があったことを確実にした。しかもこのような火成活動が日高火成活動の中でも比較的後期に発生していることが産状から推定されたことは造構論を議論する際に重要である。今後は同位体年代を測定し、アイスランダイト質火成活動の時期を確定することが急務であるとともに、詳細な岩石学的・地球化学的検討を行ない、日高火成活動帯におけるアイスランダイド質火成活動の詳細な検討が必要である。
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