昭和63年度の研究の主要な目的は、富士川流域南部に分布する富士川層群の層序を確立し、詳細な岩相図を作成することであった。山梨県南部町から静岡県清水市にいたる地域に分布する富士川層群については、一部を除いては、岩相層序学的検討がほぼ終了した。特に、従来層序が混乱していた富士川層群中・上部の層序を確立することができた。また、上記地域の25000分の1の地質図の作成が完了した。 微化石を用いた堆積年代の検討は、地域最南部に発達する富士川層群(小河内層・浜石岳層)について集中的に行った。その結果、富士川層群中のこれらの地層は、750万年〜300万年前に堆積した物であることが判明した。また、チャンネルを充填して堆積した礫質の堆積物と沖合いの堆積相を示す砂岩・泥岩互層との間に、堆積時代の間隙が認められないことが分かった。 以上の結果から、富士川流域南部に発達するチャンネルを充填した礫質堆積物のいくつかの層準の内で、最新のものの時代を決定することができた。この時代は、礫質堆積物供給の原因となった、構造運動(衝突現象)の内の一つが、後期中新世〜初期鮮新世に起ったことを強く示唆するものである。 次年度の計画としては、調査地域を富士川の北部流域にまで広げ、衝突現象の堆積物への現れである礫岩層全ての層準を層位学的な基礎調査により決定する。なお、今年度の計画中で、十分な検討ができずに終わった富士川層群と御坂層群との構造的な関係解明に関しては、次年度に繰り越し、引続き研究を続行する。
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