研究概要 |
平成元年度の研究の主要な目的は、富士川流域北部に分布する富士川層群の層序の確立と詳細な岩相図の作成であった。年度内に当初の目的を達成し、25000分の1地質図を完成した。また、前年度に得られた結果もあわせて、富士川層群全ての層序学的検討を終了した。特に微化石年代層序が確立できたことは大きな成果であった。得られた結果の概要は以下の通りである。 富士川層群は模式地において、下位より下部層・身延層・相又層・曙層に区分される。微化石による各層の堆積時代は、下部層がナノ化石帯のCN5a-CN6(中期中新世後期)、身延層がCN6中部-CN9(後期中新世),相又層がCN10-11(初期鮮新世)、曙層が有孔虫化石帯のN21(後期鮮新世)である。この模式層序を基準として、富士川谷に分布する富士川層群の層序が整理できた。層序を整理した結果、衝突現象をモニタ-していると考えられる礫岩の層準は、富士川層群中に2層準であることが判明した。一つは丸滝礫岩に代表される層準で、8Ma前後であり、他の一つは浜石岳層に代表される層準で5Ma-2Maである。前者は御坂地塊の衝突に対応し、後者は丹沢地塊の衝突に対応するものと解釈できる。古流向解析の結果もこの解釈と矛盾しない。 次年度の計画としては、富士川谷南部の構造不明部分についての調査・礫岩の層相解析・断層や岩脈による古応力場の復元等を行い、富士川層群について衝突現象との関係を解明する。また、足柄地域など他地域の調査結果も整理して、南部フォッサマグナ全域について島弧の衝突・付加テクトニクスをまとめる予定である。
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